実は苔は非常にデリケートなんです。ちょっとした環境の違いで苔の育ちが左右されてしまいます。
逆にいえば、苔が育つ環境を知っていれば、上手に苔を育てることができるということになります。
では、苔の育つ環境とはどんな環境なのでしょうか。よく聞くのは、とても湿った場所で常に霧吹きで水がかかっている環境をイメージします。
しかし、苔にはたくさんの種類があって、種類ごとに育つ環境がまったく違います。
よって、一概に苔の育つ環境はこのような環境ですとは言えないのが実際のところです。
そこで、今回は代表的な苔を3種類に絞って、苔の違いごとに育て方を説明していきましょう。
スナゴケの育て方
スナゴケは乾燥した場所で日当たりの良い砂地に群落をつくる性質があります。よって、砂地に生える苔という意味でこの名がついたのではないでしょうか。
苔は日陰のじめじめした場所を好むというイメージとは、真反対なのがスナゴケの特徴といえるでしょう。つまり、日当たりが良くないとうまく育たないということです。また、じめじめした場所でなく、比較的排水の良い場所を好むということになります。
スナゴケはとても乾燥に強く、逆に日陰や湿度の高い問頃には適さないので、その点に注意が必要です。
スナゴケをお庭に植える際は、表面に川砂を敷き、その上にスナゴケを置きます。その時スコップの平らな面を利用して、しっかりと上から叩くといいでしょう。そうすることで、苔と砂との隙間がなくなり、余計な空気を抜くことができます。
また、川砂は粗すぎない細かめのものを選びましょう。一般的には、左官砂と呼ばれるものが最適です。
苔を貼り終わったら、さらに苔の上にもうっすらと砂をかけましょう。砂が苔の隙間を埋めてくれるので、不要な空気層を埋めることができます。量は少量でよいです。苔が見えなくなるほど撒いてはいけません。その点は注意が必要ですね。
重要なのは、苔を植える環境です。スナゴケの特徴を活かせる適切な場所さえ選べば、スナゴケは基本的に強い苔なので、その後のメンテナンスは容易になります。
スギゴケの育て方
スギゴケは昔から日本で人気の高い苔です。特に京都では今でもよく使われています。とても乾燥に強い種類ですが、長期の乾燥が続くと葉先が尖り、色も緑から徐々に茶色になります。まるで枯れたような状態になるため、枯れたと勘違いして処分する方もいますが、実は茶色くなっていても完全に枯れていないことが多くあります。その証拠に、茶色くなったスギゴケに水を与えれば、多くはもとの緑色に戻ります。
もしかして、枯れたかなと思ったら、試しに水を与えてみてください。諦めるのはまだ早いですよ。
光は、半日程度の日照が必要です。なので、半分当たればよいということです。逆に1日中光が当たるような陽当りの良い場所では、葉色が薄くなり見た目は悪くなるので、美しい苔を見たいのであれば、望ましい場所ではないといえます。
また、スギゴケは、生産する時は粘土質の土壌を使って育てています。土壌は3㎝程度です。購入したら、そのまま地面に貼って植え付けます。植えつけたらスコップの平らな部分で上から叩き、さらに、表面に細かい川砂をかけることで、不要な隙間を無くすことができます。
スギゴケは生育旺盛な苔です。環境が適すると、どんどん生長して背が高くなります。そのまま放っておくと、茂りすぎたた葉が日陰を作り、根元が茶色く変色し、さらには出てくる芽の数が減ってしまいます。
そこで、スギゴケのメンテナンス方法として昔からされているのが、月1回程度の苔踏みです。苔踏みとは、字のごとくスギゴケの上を踏んで歩くのです。苔は踏むなと言われることがほとんどですが、意外にも踏むことでより良い苔ができるというわけです。その理由は、踏むことで苔が根元で折れ、根元まで日光が入りやすくなることで、再び新しい苔の芽が出てくるからです。いわゆる更新作業ですね。他にも、長く伸びた苔の葉を機械や手作業で刈り取る方法もあります。手間がかかりますが、よりキレイになります。
ハイゴケの育て方
ハイゴケはまさに這うようにして生長する苔です。逆にいえば這っているだけなので、根がほとんどなく、あっても仮の根程度ということで仮根と呼ばれ、強風が吹くと飛んで行ってしまいます。
なので、植える時は苦労します。飛ばないように川砂をすこし多めに上から撒いたりします。また、土中の虫を求めて取りが苔をひっくり返します。これは芝生の時もよくあります。防ぐためにネットを巡らせたりもします。
ハイゴケはその美しさゆえ、出雲地方では庭にとても多くつかわれてきました。乾燥にも強く、ある程度の日向と日陰に対応できるため、育てやすい苔となります。よく、松林の下に生育しているところを見ます。松葉と相まって、風で飛んでいくのを防いでいるようです。なるほどですね。
ハイゴケは程よい湿度が望ましいので、灌水を定期的にしてあげましょう。乾燥すると細くなるので、そうなってきたら灌水の目安です。また、上を歩いても這うような形状のため問題がありません。メンテナンスでも気にせず歩くことができます。ただし、根がないのでホウキで履くともっていかれてしまいますので注意が必要です。
逆に風任せにあちこちにとんでは、そこで育っていきます。他の苔よりも強いので、別の種類の苔を育てているところに入ってきたら、早めに取り除いた方がよいでしょう。
代表的な庭苔を紹介しました。このように苔は見た目は似ていても育つ環境は全く違います。また、よく苔のイメージとして考えられていることが決して正解とは限りません。
出雲では、ハイゴケとスナゴケが良く見られます。松江ではスギゴケが見られます。雲南や大田でも、その地域で育てやすい苔がありますし、また、庭の環境にも左右されます。
まずは、お手持ちの苔が、生育に適している場所にあるかどうかを確認ください。次に、必要な手入れができているかどうかを確認ください。その上で病気などを疑ってみましょう。
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