日本庭園には3つの思想が影響しています。この思想から日本庭園の意味を紐解いてみましょう。
一番目に影響を与えた思想は「神道」です。神道とは、日本の民族信仰として伝えられた道のことです。神話の神様である天照大神(あまてらすおおみかみ)を始め、国家的・民族的な基礎を持つ神々を祭り、その教えを尊ぶ信仰で、日本人の生活文化の全般に浸透しています。
神道では、動物や植物、あらゆる現象や、太陽から月、風、家のなかの便所まで世の中に存在するすべての物に神が宿っていると考え、そうした無数の神々を八百万の神(やおよろずのかみ)として崇める風習があります。
神を招いて祭をした岩石を「磐座」といいます。古代では神を迎え祭るために磐座を小型の石で周囲を囲ったり、石を積み上げたりしました。これを「磐境」といいます。こうして、五穀豊穣、無病息災、子孫繁栄を願ったのです。
日本人は、石や木に対して畏敬の念を持っています。日本庭園には、随所に神道の影響が感じられます。
二番目に影響を与えた思想は「道教」です。道教とは、中国古代に生まれた民族宗教です。道教に取り入れられた神仙思想は、水墨画とともに日本庭園に大きな影響を与えました。神仙思想では、海の彼方にある蓬莱山に仙人が存在し、不老不死の薬、仙薬をつくっているとされます。秦の始皇帝も不老不死を願って仙薬を探しに行くよう命令したといわれています。
日本庭園の配置構成の中には、蓬莱山をイメージした蓬莱石組があります。また、蓬莱山へ不老不死の仙薬や金銀財宝を求めて海を渡った様子を意味する、船石が置かれます。庭というキャンパスに神仙思想の世界を描いて、不老不死の願いを込めたのでしょう。
三番目に影響を与えた思想は「仏教」です。仏教とは、紀元前4世紀かから6世紀の間に釈迦によって創設され、6世紀ころに日本に渡ったとされます。仏教が日本に与えた影響は非常に大きく、日本庭園には仏教由来の意匠が多く見られます。
写真は仏教の世界観である小宇宙をイメージしたとされる日本庭園です。仏教の世界観では、須弥山という世界の中心にそびえるという高山があります。この山を中心に七重に山が取り巻き、山と山との間に七つの海があり、いちばん外側の海を鉄囲山が囲みます。須弥山を順に取り囲む九つの山と、八つの海があることから、この世界観の事を九山八海と呼びます。築山のてっぺんに立てられた石が須弥山を表しています。中腹にあるたくさんの石は九山八海を表しています。
日本庭園は、仏教の世界観を取り入れて、世の中の安寧や救い、願いが込められています。日本庭園は、長い歴史の中で、その時代の情勢を反映しています。いつの時代も、思想は変われど、幸せを祈った理想郷を描いていたのです。
日本庭園の成り立ちに影響を与えた思想を知ることで、日本庭園に対する見方が変わり、より深く鑑賞することができるようになります。日本庭園は単なる自然の縮図ではなく、恣意的で深い意味を込めた作品であることを感じることは日本文化を感じることでもあるのです。
特に松江市、出雲市、雲南市、大田市には独特の発展を遂げた日本庭園である出雲流庭園があります。庭園の意味を知ることで歴史的文化的価値を知ることになります。
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