剪定の時期は人間側に立つと、お盆と正月前に綺麗にしたいと思う方が多くいますが、庭木の気持ちにあると全く違います。
そもそも、樹木は本来切って欲しいと思っていません。庭木に仕立てるといいますが、人間が庭園美を意図的につくるために剪定をしています。よって、剪定することはそれ自体が庭木にとっては負担です。
それでの、良い時期はあります。では、庭木にとって剪定はどのような作業なのか、また良い剪定時期はいつなのかを見ていきましょう。
庭木にとって剪定はどんな存在
剪定は枝と葉を見た目よく切る作業のことを言います。しかし、葉は庭木にとって大切な光合成を行うための装置です。体力を使って新しい葉を出し、それ以上の光合成によるブドウ糖の生産をするからこそ、生長できるわけです。
その大切な葉を剪定により切られると生産性が下がり、体力が低下したり、風邪や病気にかかりやすくなってしまいます。
それでは、庭木は切ってはいけないのか。となってしまいますが、適切な時期の剪定とメンテナンス作業を怠らなければ、庭木は健康な状態が長期にわたり保つことが出来ます。
なぜなら、剪定によって、庭木同士が光を取り合って争う必要がなくなり、庭木全体の調和を保つことができるからです。森の木のように大きく生長するものもあれば、あっさりと枯れてしまうものもあるのとは違うのです。
つまり、剪定は大きく生長する際には妨げになるが、限られた場所で長期に渡って生きていくためには必要だということです。ただし、直接庭木の体にメスを入れるわけですから、庭木の体力を下げないような適切な時期と方法が前提となります。
剪定する際に気をつけることは
庭木をはじめ樹木は性質上、体の中のエネルギーが年間を通して変化します。
春には新しい芽を出して新芽が綺麗な時期ですが、新芽を出すためにかなりの体力を消耗しています。
よって、春から体力はぐんぐん下がっていき、梅雨にはどん底の体力となります。
しかし、新しい葉が沢山の太陽光を浴びる夏には、光合成量もマックスとなり、体力がどんどん上がっていきます。
そして、秋口から葉が紅葉して冬には落葉し、光合成も完全に止まります。同時に樹木の活動も一旦休止し、体力を温存したまま冬を越します。よって、冬は体力が高い状態にあります。
翌年の春には、温存していた体力を一気に使って、再び新しい葉をたくさん出すわけです。
このように体力の上下があるので、体力の低い時に葉を切られると、どうしても庭木の体への負担も大きくなります。つまり、夏の剪定は、体力を奪うので、毎年夏に剪定するのはお勧めできません。
また、体力だけでなく、葉には樹木の体を守る役割があります。
夏場は厳しい直射日光が直接幹に当たらないように葉が守っています。幹に直射日光が当たると、幹の下の師部や形成層が高温になり、幹焼けとう症状をおこして、細胞が破壊されてしまいます。
よく、植栽された庭木の幹が麻の包帯でぐるぐると撒かれているのを見たことありませんか。あれは、移植後の幹に直射日光が当たって幹焼けを起こすのを防止するためです。
また、冬場は冷たい風が直接幹に当たるのを防いでいます。寒冷地になれば落葉樹は問題ありませんが、温暖地出身の常緑樹は、冬の寒波は体にこたえます。幹の中の道管の水が氷るようなことがあれば、庭木は生きていけません。
このように、葉の存在は光合成だけでなく、外部の環境から身を守るための役割も果たしています。
庭木にとって剪定の適期
上述のような点を踏まえると、庭木にとって良い剪定時期は樹種によって大きく3つに分かれます。
常緑樹、落葉樹、針葉樹です。
常緑樹は、寒さが苦手です。よって、冬に葉を減らしすぎると風邪を引くといわれるように、弱ってしまいます。よって、冬以外がよいでしょう。
落葉樹は、暑さが苦手です。夏に葉を減らすと幹やけを起こしやすくなります。よって、真夏は避けた方がいいでしょう。
針葉樹は、松が代表的ですが、松は独特です。春に新芽が出ますが、新芽を芽摘みといって摘み取る地域もあります。松江市や出雲市は芽摘みをするところが多い地域です。そして、冬期に揉み上げといって、葉をむしり取ります。太陽光が枝の下まで差し込まないと松の葉は枯れて行きますので、ある程度しっかりと葉をむしり取る作業が毎年必ず必要となります。それ以外の季節にはあまり触る必要はないでしょう。
常緑樹と落葉樹は、いずれも真夏と真冬を避けるようにした方がいいです。特に強剪定といわれる大きく切り戻す作業をする時には、避けるべきでしょう。
剪定をする時期は、人の都合と庭木の都合では全く違うことを説明しました。毎年タイミングを変えるならば、さほど気にする必要はありません、多くの場合毎年同じ時期に剪定するところが多いです。そうなると人の都合でばかり剪定していると、徐々に庭木の体力を奪っている可能性があります。そのような視点で見てみましょう。
剪定の時期や樹種によっての違いが分かりにくい時は専門業者に相談しましょう。
また、花をたくさん咲かせたいという剪定の方法は別のところで説明しています。
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