クロマツを美しく育てる秘訣:1回剪定と2回剪定の違いとポイントを解説

 クロマツの剪定方法には、年に1回の剪定と、年に2回の剪定の2つの方法があります。これらは、クロマツの成長や見た目を整えるために行われるもので、特に庭木として用いられるクロマツにとって非常に重要です。どちらの剪定方法もそれぞれのメリットや適した状況があり、最終的には庭の環境や目的に応じて選ぶことが求められます。本記事では、それぞれの剪定方法の違いについて詳しく説明しながら、初心者にもわかりやすく解説していきます。

クロマツとは?

 まずはクロマツについて少し紹介します。クロマツ(黒松)は日本を代表する松の一種で、強い生命力と耐久性を持つため、庭木や盆栽として広く利用されています。黒い樹皮と硬い針状の葉が特徴で、特に海岸沿いの風景などでもよく見かけます。その見た目の美しさと強靭さから、日本庭園や公園にもよく植えられており、古くから日本の景観を彩る重要な存在です。

 山陰地方ではクロマツは非常に縁の深い庭木です。島根県の県木も出雲市の市木もクロマツです。山陰地方ではクロマツに適した気候なのでしょう、海岸沿いに植えられてクロマツは、特に出雲マツと呼ばれ、昭和の時代には全国各地から買い求められていました。ウロコと呼ばれる外樹皮が深く割れて亀甲模様となり、幹は左右に曲がりながら全体のバランスが取れており、枝が絶妙な位置に配置された出雲マツは、浮世絵に描かれたような見事な美しさです。このように育つクロマツは全国各地でも珍しく、出雲地方の厳しい日本海の気候と、庭師職人の熟練の育成技術がなせる技なのです。

 庭木販売で全国的にも有数な兵庫県宝塚市では、出雲マツに1000万円以上の値をつけているものも珍しくはありませんでした。盆栽をそのまま大きくしたような美しい樹形には、何物にも代えらえない絶大な価値を見出されていたのでしょう。

 このようなクロマツですが、樹形を美しく健康に育つためには、定期的な手入れが欠かせません。その中でも、剪定はクロマツの形を整え、風通しを良くし、病害虫の予防にも繋がる重要な作業です。次に、年に1回の剪定と2回の剪定の違いについて説明していきます。

年に1回の剪定とは?

 年に1回の剪定は、初心者でも比較的取り組みやすい方法です。主に冬に行われる「冬剪定」と呼ばれる作業が中心で、これはクロマツの生長が止まる休眠期に行うことが推奨されています。冬剪定では、主に不要な枝を取り除き、形を整えたり、枯れ枝や病気の枝を切り落とすことが目的です。

冬剪定の主な目的

  1. 形を整える:クロマツは枝の生長が早く、自然のまま放置すると枝が乱れてしまいます。これにより、樹形が崩れ美観が損なわれます。そのため、年に1回の剪定では、大きく生長しすぎた枝を切り戻し、樹木全体のバランスを整えることが重要です。
  2. 風通しと陽当りを良くする:クロマツは風通しが悪くなると、病害虫が発生しやすくなります。病害虫にかかると、マツクイムシの被害を引き起こしやすくなるため、剪定によって風通しを良くし、害虫がつきにくい環境を作ることが求められます。マツクイムシについては別のブログ「マツクイムシとは」で詳しく解説していますので参照ください。また、風だけでなく、日光も重要です。クロマツは枝が混んで日光があたりにくくなると枯れてしまいます。クロマツの肥料は日光だと言われるほど光には敏感です。日光が上から下まで全身にあたるよう剪定します。
  3. 枯れ枝の除去:病気や老化により枯れてしまった枝は、そのままにしておくと病気が広がる原因となります。これを取り除くことで、クロマツ全体の健康を維持します。

年に2回の剪定とは?

 年に2回の剪定は、クロマツの美しい樹形を維持するために、より手の込んだ方法です。これは、芽摘み(めつみ)揉み上げ(もみあげ)という2つの作業を含みます。芽摘みは、春から夏にかけて行われ、揉み上げは秋に行われます。

1. 芽摘み

 芽摘みは、クロマツの生長をコントロールするために新しい芽を摘む作業です。特に、新しい枝が伸びすぎないように、芽の先端を手で摘み取ることが行われます。この作業は、クロマツの枝が密集しすぎないようにし、バランスの取れた樹形を保つために非常に重要です。

芽摘みの効果
  • 枝の成長を抑える:新しい芽がそのまま伸び続けると、枝が長くなりすぎてしまい、見た目が乱れてしまいます。芽摘みによって生長をコントロールすることで、コンパクトで美しい形を保てます。
  • 養分の分散を防ぐ:クロマツは芽をたくさん出しますが、それぞれの芽に養分が分散されると、全体的な成長が弱くなってしまいます。芽摘みをすることで、必要な芽にだけ養分が集中し、健全な生長を促します。

2. 揉み上げ

 揉み上げは、芽摘みとは異なり、秋から冬にかけて行われる作業です。揉み上げでは、クロマツの葉の密度を調整し、風通しを良くすることが主な目的です。手で軽く枝を「揉む」ようにして、古い葉や不要な部分を取り除くため、「揉み上げ」という名前がついています。

揉み上げの効果
  • 風通しの改善:クロマツは葉が密集しやすいため、揉み上げによって余分な葉を取り除くことで、風通しを良くし、病害虫の発生を防ぎます。
  • 見た目を整える:葉が多すぎると全体が重たく見えるため、揉み上げで葉を軽くして、すっきりとした印象を与えます。
  • 陽当りの改善:上述したようにクロマツは日光があたらないとすぐに枯れてしまいます。揉み上げにより枝葉の数を減らして日光が全身に当るように調整します。

年に1回剪定と2回剪定の違い

 それでは、年に1回の剪定と2回の剪定の違いを詳しく見てみましょう。両者は手間のかけ方や、仕上がりに大きな違いがあります。

1. 手間の違い

 年に1回の剪定は、基本的に冬に行われるため、比較的手間がかかりません。特に、初心者や忙しい方には、この方法が適しています。冬の剪定作業を行うだけで、ある程度はクロマツの健康を保つことができます。

 一方、年に2回の剪定は、芽摘みや揉み上げといった追加の作業が必要です。これにより、手間は倍増しますが、その分、クロマツの樹形を細かく整えることが可能です。特に、庭の景観を重視したい場合や、主木としてクロマツを育てている場合には、2回の剪定が推奨されます。

2. 見た目の違い

 年に1回の剪定では、全体的に大きく整えることが目的となるため、細かい調整はあまり行いません。そのため、ある程度自然な見た目を保ちながら、クロマツを育てることができます。

 年に2回の剪定では、芽摘みや揉み上げを行うことで、よりきめ細かく形を整えることが可能です。これにより、コンパクトでバランスの取れた美しい樹形を保つことができます。特に日本庭園や盆栽のような、芸術的な庭木を目指す場合には、2回剪定の方法が適しています。

3. 成長スピードの違い

 年に1回の剪定では、クロマツの生長をあまり制限しないため、全体的に自由な生長を促します。これにより、クロマツが自然な形で大きく育つことができますが、生長が早いため、形が乱れることもあります。

 年に2回の剪定では、芽摘みや揉み上げによって生長をコントロールするため、ゆっくりと生長させながら、きれいな形を保つことができます。この方法では、生長が抑制されるため、長期的に見てもバランスの取れた樹形を維持することが可能です。

まとめ:どちらの剪定方法を選ぶべきか?

 クロマツの剪定方法として、年に1回の剪定と年に2回の剪定の2つの選択肢があります。どちらを選ぶかは、以下のポイントを参考にしてください。

  • 手軽さを重視するなら年に1回の剪定:初心者や、あまり手間をかけたくない方には、年に1回の冬剪定がおすすめです。この方法でも、クロマツの健康を保ちながらある程度美しい樹形を維持することが可能です。
  • より美しい樹形を目指すなら年に2回の剪定:芽摘みと揉み上げを行う年に2回の剪定は、手間がかかりますが、その分クロマツの形をより美しく保つことができます。特に、芸術的な庭木や盆栽としてクロマツを育てたい場合には、この方法が最適です。

 また、どちらの剪定方法を選んでも、適切なタイミングと方法で行うことが大切です。剪定を適切に行うことで、クロマツは健康的に生長し、病害虫にも強い美しい木に育つことでしょう。タイミングと方法については専門業者に相談するとよいでしょう。

補足:剪定の基本的な注意点

最後に、剪定を行う際のいくつかの基本的な注意点について触れておきます。

  • 剪定バサミの衛生管理:病気の枝を切った後に他の枝を切ると、病気が広がる可能性があります。作業の途中で剪定バサミを消毒することを忘れないようにしましょう。
  • 風通しを意識する:剪定の際は、単に形を整えるだけでなく、風通しを良くすることも意識しましょう。これにより、クロマツは病害虫の被害を受けにくくなります。
  • タイミングを守る:芽摘みや揉み上げなどの作業は、適切な時期に行うことが重要です。特に生長期に行う作業は、木への負担が大きくなることがあるため、時期を守ることが大切です。

 クロマツの2回剪定は、葉の長さも枝の長さも短く整えられます。1回剪定との見た目の大きな違いは、細かな葉が整った樹形が作られる点が大きいでしょう。1回剪定は手軽な反面、美しい葉の整った姿にはなりにくいことをよく理解しておきましょう。2回の手間をかけるからこその美しさがあるのです。
 剪定の1回と2回とでは、大きく違いますが、元気に生長できるかどうかについては、いずれも問題ありません。見た目にどこまでこだわるかで選択するとよいでしょう。

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