日本庭園では砂利が多くつかわれていますが、砂利に箒で模様をつけたものもよく見ます。京都では特によく見るように思います。それに比べたら、島根県の松江市や出雲市では少ないように思いますが、それでもたまに見かけます。
砂利に模様があると、とても芸術的で美しく見えます。 水に現れる模様は水紋、砂丘に風で現れる模様は風紋とか砂紋とか言います。庭の砂利の模様は、砂紋と呼んだり、箒目と呼んだりします。
では、この箒目はそもそもどのような意味があって描かれることとなったのでしょうか。
これについて、日本の造園教育の創始者である故上原敬二先生が解説していますので、内容を見ていきましょう。
参考:上原敬二、石庭のつくり方、加島書店、1996
始まりは防犯だった!
戦後時代、忍者が刺客となって人を襲うといったことは、よくある話でした。決まって夜に屋敷に忍び寄るわけですが、庭に侵入すると、砂の上に足跡がつきます。しかし、単に砂を敷いているだけだと、容易く足跡を消すことができます。そこで、簡単に直せないように箒目がつけられたというわけです。
箒目の始まりが防犯であったとは、少し意外で驚きますが、これも諸説の一つとして語り継がれているようです。
もちろん、現代は忍者対策としているひとはいないと思いますが、砂利は音が鳴るので、防犯対策としても活用されていることもありますので、始まりが防犯であっても、不思議ではありませんね。
楽しく保つ方法として
庭には落ちが落ちて、毎日のように掃除をしなければ、美しく保つことができません。毎日毎日掃除をするのも大切なことですが、なんとも大変なことでもあります。現代においては、いっそのこと庭じまいしよう、という方も少なくはありません。
しかし、箒目をつける作業は楽しいものです。掃除というよりは新しく作り出すという感覚に近いです。そして、箒目をつけると、事前と落葉は取り除かれ、庭は美しく保たれます。
箒目は庭を楽しく保つための工夫でもあったのかもしれません。
寺院では庭の清掃は朝一番の修行として行われるところがあります。箒目もその一環として、綺麗に丁寧に毎日整えられます。箒目は庭を整えるとともに、精神を整え、心を清めることにつながっているのです。実際に箒目をつけると無心となり、時間を忘れ、清々しい気持ちになります。
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