サクラの幹から樹液が垂れているのは問題ない?

 日本の春を象徴する桜は美しいものです。特にソメイヨシノは葉が出る前に花が満開になることから非常に人気です。花見の名所と言えば、多くはソメイヨシノです。

 ソメイヨシノの見ごろを過ぎた5月、ふと幹を見るとまるで血が流れるように樹液がしたたり落ちています。写真は島根県出雲市内のソメイヨシノです。拡大すると、樹液の周りにはおがくずのような細かな粒が確認できます。見るからに苦しそうですが、これは樹にとって大丈夫なのでしょうか。

 これは害虫による食害痕から樹液が流れ出たものです。その害虫とは、コスカシバといいます。コスカシバとはどんな害虫でしょうか。詳しく見ていきましょう。

コスカシバとは

 コスカシバは、サクラ、ウメ、モモを好んで食害する害虫です。枝幹内で幼虫が越冬して、春以降に成虫が羽化します。成虫の出現期間は長いですが、とくに夏ころの発生が多くなります。
 雌成虫は樹皮の荒れた部分に産卵する傾向があり、幹の樹皮の隙間などに1卵ずつ産み付けます。幼虫は樹皮下の形成層を食害し、虫糞は外へと押し出されます。写真のおがくずがその虫糞です。
 成虫は体長約15ミリ程度で、翅が透明で透けています。透かした羽から命名されたのでしょう。

コスカシバの被害は

 コスカシバは幼虫が樹皮下の形成層を食害するため、樹勢に大きく影響します。コスカシバの幼虫は小さいもので、幹にあいた穴も僅か数ミリ程度ですが、樹木は樹皮のすぐ下にある形成層で生きています。その厚さ僅か数ミリ程度です。形成層は樹木にとって命そのものであり、形成層を食害するコスカシバは小さくとも樹勢に大きな影響を与えるわけです。よって、多数の食害をうければ、枯死に至ってしまいます。
 幹や枝の分岐部に食入されることが多く、細い枝では環状に食害され、枯死して折れやすくなります。食害により樹皮が荒れると、雌成虫が好んで産卵し、幼虫の発生が集中するため、繰り返して被害を受け、樹勢が弱まるとともに景観も悪化します。放っておくと悪循環となります。
 コスカシバが食害した幹の傷は、後々腐朽菌の進入により材の腐朽が始まります。その結果、徐々に枝や幹の部分的な強度の低下が進み、最終的にはちょっとして風や雪の重み、または自重に耐え切れなくなり、枝落ちや倒木しやすくなります。ソメイヨシノは、花見をしたり、街路樹に植えられたりと、人気があるがゆえに人の生活の近くに存在しています。万一倒木があれば人命にかかわる大きな事故につながりかねません。
 徐々に腐朽菌が進行することで倒木に至る場合は、事前に予知することが非常に困難です。予期なく突然と倒木を起こしてしまいます。よって、被害も大きくなる可能性が高くなります。
 最初はほんの小さな穴から樹液が出ているだけに見えますが、のちのち大きな問題になりかねないことを理解しておかなければなりません。

コスカシバ被害への対処

 コスカシバの発生は樹液やおがくずで容易にわかります。見つけたらまずは、針金を穴に突き刺して幼虫を掘り出しましょう。
 また、幼虫若齢期に相当する秋季に薬剤散布することで駆除する方法もあります。
 しかし、上記のように倒木の危険性がある場合は、安全性の理由から伐採の決断が必要な時もあります。以上を感じたら、放っておかずに、必ず専門家に相談して、適切な処置をするようにしましょう。


【参考資料】
花木・鑑賞緑化樹木の病害虫診断図鑑 第Ⅱ巻 害虫編 竹内浩二 近岡一郎 堀江博道
一般財団法人農林産業研究所 2020.9.11

樹木医必携・応用編 小林享夫 坂本功 一般社団法人日本樹木医会 2010.3.31

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