ヤマボウシの葉が茶色くなってきた!もしかして病気?

 真夏の空に可愛らしい葉が木陰をつくって、個人邸で人気なロングセラーのヤマボウシ。春の白い花だけでなく、風にそよぐ優しい株立ちの樹形は現代建築ピッタリの装いから多くの家で採用されています。産地では大きいもので10mを超すこともありますが、通常の住宅では3~5m程度に維持できます。大きく大木になりにくいところも人気の理由ですね。
 そんなヤマボウシの葉が茶色くなって心配というご相談です。何が起きているのでしょうか。検証してみましょう。

全体を見る

 まずはいただいた写真から樹形全体を見てみましょう。場所はご自宅の出入口の近くで照明が設置されていて、ヤマボウシを重要な庭木として利用されていることがわかります。近くには雨水桝が設置されており、地面は全体を人工芝で綺麗に整備されています。その上にはヤマボウシの物と思われる落葉が沢山落ちています。この写真が7月末現在だとすると、時期外れの落葉です。何かしら落葉せざるを得ない状況があるのでしょう。樹形は2本の株立ちから5本に幹が分かれて全体的に横に広がった樹形をしています。建物と建物の間にあるので、おそらく半日程度の日光でしょうか。ヤマボウシは日光を求めて競争して大きくなるというよりは、川の上に横広に枝を伸ばして他の植物があまり繁茂しないところで日光を獲得し、日陰でも育つことのできる体質を手に入れていますので、このような半日陰の場所は適する場所と言えます。逆に薄い葉は強い直射日光があたりすぎると日焼けしたり、強風や乾燥風により水分が抜けてしわしわになってしまったりするので、半日陰の風の影響が少ないところがベストと言えます。
 写真を拡大すると上部は葉のない枝先が沢山見えます。よって、落葉は上部枝先の葉が落葉したのでしょう。また、残っている枝先の葉が萎れて下を向いています。低いところの葉は横向きなのに対して、上部は下向きです。これは水分が根から上がって上部へ行くので、水不足になると上部ほど萎れが早いことを意味しています。よって、現在水不足の状態です。
 また、上部の葉はところどころ穴があいているのが分かります。1枚の葉に多いものだと6つくらいでしょうかΦ5㎜程度の穴があいています。これは何かしらの害虫が食した穴と思われます。また、葉が部分的に茶色く変色しています。葉の変色は全体的に見られます。葉の変色と落葉で非常に痛々しく見えます。さらに拡大した写真で確認して見ましょう。

ヤマボウシ全景

葉を拡大して見る

 枝の一部を拡大した写真をいただきましたので、見てみましょう。これを見ると葉に穴があいていた害虫が特定できました。左上のほうに細い枝にぶら下がっている1センチ程度の細い三角形の黒い影が見えます。これはミノガです。いわゆるミノムシですね。枝を巻いているように見えるのでチャミノガでしょうか。ミノガは食欲旺盛で葉を食い尽くし、時には丸裸にされてしまいます。時間ともにミノが大きくなり、食害の量も増えます。ミノで体を守っているので、通常の接触剤薬剤散布は効きが悪いので、オルトランのような浸透移行性の薬剤を使用するとよいでしょう。
 葉の茶色の部分ですが、葉が茶色くなる主な原因として、菌類による病気、直射日光による葉焼け、強風による乾燥などがあります。下枝まで茶色くなっていることや建物に囲まれていることから葉焼けと乾燥害は考えにくいですね。そうすると菌類が疑わしいですが、このように不規則に茶色くなっていく菌類として斑点病があります。その名の通り斑点になるのが特徴です。菌類は日陰で風通しの悪い場所に繁殖する傾向にあります。その点でこの場所は菌類の繁殖がしやすいと言えるかもしれません。そうだとすると殺菌剤の散布や病原菌の温床になっている落葉の処分が対策として必要です。
 おそらく写真は比較的下枝の方だと思います。葉が横にしっかりとしているからです。上部の葉は萎れています。それは水不足が原因です。人工芝で覆われている状況なので、灌水作業は非常に難しいのではないかと考えらえます。特に植えた年には灌水を行う必要があります。人工芝には1m1カ所くらいの排水用の水穴があります。その穴では灌水は難しく、雨水のみでは到底水分が足りません。近くの排水桝への排水が良好であれば良好であるほど、ヤマボウシに供給される水分は少なくなります。よって、ヤマボウシ根に直接供給されるような場所を設置しておくのがよいでしょう。例えば、珪藻土焼成粒を有孔管に充填した給水及び酸素供給管を土中に垂直に数カ所設置しておくなどです。これについては、一般の方だと難しいので、専門知識のある専門業者に相談してみましょう。今後の水供給のための対策ができればよいかと思います。

ヤマボウシの拡大

まとめ

 今回のヤマボウシは写真で分かる範囲では以下の症状が確認されました。
・水不足
・ミノガによる食害
・斑点病の罹病
 上記の対策としては、灌水ができる環境作り、浸透移行性薬剤散布、殺菌剤散布が有効です。また、落葉はなるべく早く処分しましょう。
 対策をすれば十分に元気になります。とても良い樹形で立派なヤマボウシですので大切にしてください。なお、ここの記載は写真からの推測ですので、詳しくは掛かりつけの専門家にご相談ください。


 通常落葉樹の葉が茶色くなるのは秋口の11月ころです。ヤマボウシは紅葉してから落葉します。しかし、今回のように葉が茂っていなければならない時期に茶色くなったり落葉するのは、何かしらの問題が起きたという証です。この異変にいち早く気づいて対策をすれば十分に元気に戻ります。しかし、放っておけば徐々に体力がなくなり、枯死してしまってからでは何の手立ても効かなくなります。早く気づいて専門家に相談するのが命運を隔てることとなります。今回のご相談は早期に気づかれたので、対策を講じることで十分に元気を取り戻してくれるでしょう。

庭木の樹勢診断について詳しくは【タケダ樹木クリニック】までお問い合わせください。

タケダ樹木医クリニック

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