カエデの葉がスカスカになった!もしかして病気?

 日本の歴史において長く愛されている庭木にモミジを始めとするカエデ類があります。愛らしい赤ちゃんの手のような葉といい、秋口の素晴らしい紅葉といい、その人気は絶えることがないでしょう。花の人気はサクラ、葉の人気はモミジといったところでしょうか。そんな人気なカエデ類をご自宅に植えたら、葉がスカスカになったとうご相談です。
 今回のカエデ類はコハウチワカエデとオオモミジです。2つの庭木に何が起きているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

コハウチワカエデ全体を見る

 まずはいただいた写真から樹形全体を見てみましょう。コハウチワカエデは背が高く丈夫で葉が茂っていますが、下枝は少ない樹形です。根元から3本の幹がたつ株立ちです。真っすぐ上を目指して下枝のない樹形から、もともと下の方が日陰で上部が日向の場所で、周囲は樹木などがひしめき合ったような場所で育ったようなイメージです。コハウチワカエデは葉だけでなく、幹もキレイな庭木です。目線には美しい幹肌が良く見え、上を見ると可愛い葉が木漏れ日をつくる、そんな庭木に理想の樹形です。
 葉を見ると所々茶色く見えます。枝先は葉がないところもあります。葉に異常を感じますので、さらに注目して見ましょう。

コハウチワカエデの全景

コハウチワカエデの葉を拡大して見る

 枝葉に注目すると、透けたようになっています。これは、葉を幼虫が食害したあとです。幼虫とはガの幼虫です。幼虫は小さい時には口も小さいため、葉を全てかじることができません。よって、葉の裏側から表面だけをかじって食します。さらに、このように見事なかすり状になるのは、1匹ではなくて数十匹が列になって一斉に食害をするからです。この食害痕をみると、おそらく害虫はヒロヘリアオイラガではないでしょうか。イラガは背中にトサカのような針が刺さったような姿をしていて、緑色です。その針には毒があり、刺さると非常に痛いです。写真では姿は見えませんが、かなり食害しているので、すでに大きく生長してガになってしまったかもしれません。イラガは繭が恐竜の卵のような形をしていて、大きさは1cm程度です。幹や枝の分かれ目などに繭が良く発見できますので、探してみるといいでしょう。もし発見したら、石でたたいてつぶしましょう。すでに繭から羽化していたら空ですが、その前ならば捕殺可能です。
 また、幼虫に対しては接触剤殺虫剤もしくは浸透移行性殺虫剤により駆除するのがよいでしょう。コハウチワカエデ自体は今回の被害を受けても再び新芽がでます。何度も食害にあると光合成を阻害されて樹勢が落ちますので、今後は葉の食害を見つけたらなるべく早く対策しましょう。

コハウチワカエデの拡大

オオモミジ全体を見る

 根元から沢山の細い幹がでている武者立ちに近い株立ちです。整った樹形で、かつモミジのやわらかい枝が演出されている美しい樹形です。モミジはその美しい樹形を保つための剪定が非常に難しく、どこを切ったか分からない自然の風合いに仕上げなけれいけません。その点においてもこの庭木はこれまで丁寧に剪定管理されてきた様子が伺えます。
 見るとすぐに異変に気付きます。上部が茶色く変色しています。糸を引いているような部分も見られます。葉が茶色く枝に残っている状態ですね。もっと拡大して見てみましょう。

オオモミジの全景

オオモミジの葉を拡大して見る

 葉を拡大すると大きな穴が開いているのが分かります。枝先の茶色の葉も穴が開いています。よって、何か大きな幼虫に食害されていると思われます。さらに拡大して見ると、犯人が特定できます。中央部の緑色の細い枝に茶色い枝を束ねたミノムシが見えます。ちょうど枝にぶら下がっている様子です。よく見るとこの写真の中でも5~6匹程度確認できます。この樹にはかなりの数のミノムシがいると思われます。結構大きく育っているように見えますので、しばらく食害が継続しているのではないでしょうか。最初はミノムシも僅か数ミリの小さいものです。目では確認が難しいようなサイズですが、このようにはっきりと見える2cm以上の大きさに育つには、モミジの葉をかなり食べてしまっている証拠です。まずは、このミノムシを浸透移行性の殺虫剤で駆除するのが良いでしょう。捕殺でも構いませんが、数が多くて間に合わないかもしれません。
 中央部の細枝に白いモフモフした塊が映っています、ハゴロモの幼虫でしょうか。はっきりと見えませんが多発はしていないようです。
 

オオモミジの拡大

まとめ

 今回の症状をまとめると次の通りでした。
・イラガの食害
・ミノムシの食害
・ハゴロオの発生
 いずれも、カエデ類には良く発生する害虫です。殺虫剤散布により対処可能です。庭木の樹勢は良いので、害虫駆除をしっかり対策すれば元気に育ってくれるでしょう。害虫は一度放っておくと、毎年ここは故郷といわんばかりに増えていきます。徐々に被害が大きくなり、景観を損なうだけでなく、樹勢が衰える原因となります。今年対策をしておけば、来年はぐんと被害が減る可能性が高いので、なるべく早く対処します。
 また、ここに書いた内容は、写真から推測しているものです。よって、詳しくは最寄りの専門業者に相談しましょう。
 


 庭木を植えると、害虫が寄って来るのは当たり前のことですが、意外にそれは予め十分に説明を受けていないため、知らない人が多いのが現実です。庭木の害虫は、実は、多くが決まった木に決まった害虫がつきます。よって、予めどんな害虫が付きやすいかについては専門家であれば分かっています。後で慌てないためにも、庭木を選ぶ段階で、つきやすい害虫やなりやすい病気についても説明を受けておくのが良いでしょう。

庭木の樹勢診断について詳しくは【タケダ樹木クリニック】までお問い合わせください。

タケダ樹木医クリニック

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