庭木を植えた後の水やりはどのくらい必要ですか?

 庭木を植えたら、元気に生長するためには、管理作業が必要になります。いくつかの管理作業がありますが、中でも水やり作業は最も重要な作業となります。
 水やり作業に過不足があると、庭木は瞬く間に衰弱して、場合によっては枯死する可能性があるからです。
 しかし、水やりと言っても、どのくらいの量をどのタイミングで行ったらよいのかについては分かりにくいものです。
 特に庭木を植えた時に、気がついたら葉が茶色になっていたり、ぐったりと弱っていたりといったことが多くあります。
 実は、植えて数年を経た庭木は、水やりがほとんど不要になります。しかし、植えた年や翌年は水やりが必要になります。このギャップがなかなか理解されない理由でもあります。
 では、なぜ、水やりが必要であったり、徐々に必要でなくなったりするのでしょうか。そのメカニズムについて説明して、適切な水やりの方法をお伝えしましょう。

庭木に水が必要な理由

 庭木は、生きてい行くための活動をしています。私たちは呼吸をして食事をしているように、庭木も自身の体の細胞を生かすための活動をしています。
 それは主に、水分を根から吸収することで成り立ちます。具体的には、根から水分を吸収して体内に取り込みます。その時に体に必要な無機養分も一緒に取り込みます。水分は枝葉の先まで行き届きます。葉では水分と太陽光を利用して光合成を行い、ブドウ糖を生成します。生成したブドウ糖は体全体に届けて生長の糧とします。つまり、水分は常に必要な大事な命の源なのです。

森林の木に水やりが不要な理由

 庭木にとって水が必要なことはお分かりいただけたと思います。しかし、森林に水やりをしていないし、庭木にも水やりをしていないのに、元気に育っているのは何故でしょうか。
 それは、時折降る雨を上手く吸い上げているからです。特に森林には長年落葉が積み重なって出来上がった腐葉土があります。そこに豊富な土壌微生物が肥沃な土壌を生成してくれています。その様な土壌は雨を溜めて湿潤な土壌状態を保ってくれます。そこに、広く深く広がった植物の根が、年中水を吸い上げているのです。
 庭木についても、根が広く深く広がれば、より広い面積の土壌から水分を集めることができます。根は水を効率的に集めるための優れた装置なのです。塀の近くや水道管の近くに水分が多くあることを知っている根は、自然とそのようなところに伸長して、炎天下の真夏においても、効率よく水分を吸い上げているのです。
 もちろん限界があります。砂漠にはいくら根を張っても水分を得ることはできませんから、少しでも水分を無駄遣いしないように葉を針のように補足して幹に水分をたっぷり貯めるため多肉に変化しているのです。

植えた庭木に水を欠かしてはいけない理由

 庭木は根を張って水を得る優れた手段を持っているのですが、その手段が作用するには時間がかかります。
 庭木は植栽するときに他の場所で育てたものを移動しています。移動する時に根を切断して移動可能にしています。よって、庭木を植えた時は、庭木が水を得るために伸ばしてきた根のほとんどがありません。根がないと当然水を吸い上げる装置がありません。
 そうすると庭木としては、わずかに残った根でなんとか水を吸い上げて、早く根をたくさん伸ばそうとします。根が四方八方にある程度伸びるまで最低3年必要と言われます。
 その時に、土壌が不良であったり、コンクリートで囲まれていると、根の伸長も期待できません。土壌については、別のコラムで詳しく説明しましょう。
 庭木は植えた時には根が未熟で、その範囲もほんのわずかです。よって、植えられた幹の周りに欠かさないように水を与えてやる必要があります。水は、一度切れると後でいくら沢山与えても庭木は枯死してしまいます。それだけ水の移動は早くて、庭木の細胞も元に戻すとができない性質を持っています。
 よって、庭木を植えた年と翌年は欠かさず水を与えましょう。

乾燥したらたっぷりと水を与える理由

 植えた庭木に水が与える際、大事になるのが量と回数です。
 庭木の説明に、水は乾燥したらたっぷり与えてください、と表示されているのをよく見ます。その通りなのですが、何故乾燥したら、たっぷりなのでしょうか。逆に、常に水を少しずつ与えるとどうなるのでしょうか。それは、庭木の性質に関係しています。
 庭木は、水を求めて根を張ります。常に水を少しずつ与えると、常に地表面だけ濡れている状態となります。そうなると、地表面に根を張っておけば常に水分が吸収できると判断して、地表面に無数の細い根を張り巡らし始めます。この地表面にある無数の根は、実は非常にもろい根です。真夏に高温乾燥状態になると、瞬く間に地表面が乾燥してしまいます。そうすると、地表面に伸びた無数の根は簡単に枯死してしまい、水を吸い上げることができなくなります。
 では、乾燥したらたっぷりと水を与えるとどうなるでしょうか。水をたっぷり与えると、地中深くまで浸透します。土壌の乾燥は地表面から順番に乾燥して、地中深くなるほど乾燥しにくくなります。そうなると、庭木は根を深く伸長させ、水が常に得られる状況を作ろうとします。こうして根が地中深く伸びた庭木は、真夏の高温乾燥の状況においても、地中から水分を吸い上げて、生長することが可能になるのです。
 よって、水やりは、地表が乾燥したらたっぷりと与える方が、強くて枯れにくい庭木を育てることになります。
 
 なお、土壌の中は隙間が少なく、水分は思った以上に土壌中深くへは浸透しにくいものです。多少の雨が降っても、掘ってみるとほんの地表だけしか濡れていません。水をたくさんまいたと思っても、実際は地表が濡れた程度ということが多々あります。そこで、たっぷり水を与える方法についてご説明しましょう。

植えた庭木に必要な水の量と回数

 庭木に必要な水の量は、上から見ていてもわかりません。どこまで水が浸透しているのか、それは土壌を掘ってみないと分かりません。
 そこで、大体の目安として、必要な水の量をリットルの単位で表してみましょう。
 庭木に必要な水の量は、庭木の大きさによって変わります。当然大きくなればなるほどたくさんの水が必要になります。しかし、ここで多くなるとは、庭木の樹高の高さとは限りません。仕立物といって高さを制限して何十年も育てた庭木は、背が低くてもたくさんの水が必要です。庭木の水の量に比例するのは、庭木の地際の幹の太さです。これを根元周といいます。つまり、庭木の根元部分の直径のことです。根元周10cmというと、根元の直径が10cmであることを意味します。
 この根元周別に庭木に必要な1回あたりの水量と季節ごとの回数の目安を表にしました。

根元周太さの例水の量放水時間
10㎝まで人の腕程度10㍑1分1/週2/週1/週1/2週
20㎝まで人の太もも程度20㍑2分1/週2/週1/週1/2週
30㎝まで人の腰程度30㍑3分1/週2/週1/週1/2週
※根元周:庭木の根元部分の直径
※太さの例:根元周の目安参考例
※水の量:1回に与える水の目安量
※放水時間:水の目安量を水栓で行った場合の目安時間
※春夏秋冬:季節ごとの週当たり目安回数

 もちろん、雨がしっかり降った場合は、1回飛ばしても構いません。上述したように土壌の状況や陽当りの状況などの植えられた場所の環境に左右されますので、あくまでも表は目安としてご理解ください。特に植えた年の水の量ですので、2年目、3年目となると徐々に減らしていきましょう。慣れると地表の状態や庭木の葉の様子を見て、大体乾燥状態が分かるようになります。庭木が水を欲しがっているなと、感じたらたっぷり与えるという感覚で十分です。
 乾燥状態によって、見た目である程度判断できるは葉の状態です。乾燥時の葉の変化について次に説明しましょう。

乾燥状態の庭木の変化

 庭木は、根から水を吸い上げて枝葉の先端まで運びます。よって、水が不足すると、枝葉の先端が真っ先に水不足となります。
 葉は水が十分に供給されていると、ピント張ってみずみずしく見えます。葉物の野菜をイメージすると分かりやすいと思います。逆に水が不足すると、葉はくるっと丸まったり、しわになったりします。乾燥して縮むイメージですね。この症状がでると、水不足になっているということが分かります。


 もっともこの症状が最初に現れるのは、てっぺんの葉先です。よって、水の状態を庭木を見て判断する時には、庭木のてっぺんの葉を見ると良いでしょう。しかし、背の高い木ではなかなか見えないと思いますので、その時は見える範囲で上部の葉先を見るといいでしょう。
 葉の乾燥が進むと、落葉したり、そのまま茶色くなったりします。落葉している場合は、庭木が水不足に対処しようとして、自ら葉を落として蒸散を減らす反応を意味します。よって、この状態であっても早急にたっぷりと水を与えれば復活する可能性はあります。しかし、葉が枝にくっついたまま茶色くなってしまった場合は、水不足が早いスピードで進んだために、庭木が対処できず、そのまま乾燥状態を迎えてしまったことを意味します。よって、こうなると枝が枯死してしまう可能性が高くなります。
 つまり、茶色くなる前に変化に気づかないと枯損する可能性が高くなるということです。下の葉に比べて上の葉が縮んでいたり、落葉する時期でもないのに葉が落ち始めたりした場合は、要注意です。

土壌乾燥時の水やりのコツ

 真夏に土壌が乾燥してしまった時、水やりをしても地表面を流れてしまって、なかなか浸透していかないことがあります。
 そのような時の水やりのコツがいくつかありますので、ご紹介します。
 まず、水が地表面を流れてしまう場合は、幹を中心にして丸く軽く溝を掘り、土手をつくって水が溜まるようにします。
 次に、1度に水をたくさん入れると土手が決壊して流れ出てしまうので、一旦溜まったら水やりを止めます。しばらくして水が浸透して行ったら、再び水が溜まるまで与えます。このようにして2回に分けて水やりをすることで、確実に地中深くまで水が浸透していきます。
 ホースの先も、強い勢いが出るタイプではなくて、調整してやわらかいシャワーの出るタイプのヘッドが地表面を破壊しにくいので、より望ましいです。
 高さが5m以上の大きな木の場合は、水の量もたくさんになり、より地中深くに浸透しないといけません。その場合は、鉄の棒を地面に突き刺して、ぐりぐりと深くまで差し込んだうえに、水を流すと非常に浸透しやすくなります。


 庭木の水やり作業は、非常に重要でありながら、なかなか分かりづらいところが多くあります。水不足だと思っていたら、排水不良だったなんてこともあります。水やりは、あくまでも排水良好な土壌であることを前提にしています。排水不良の場合は停滞水対策を講じて必要がありますので、水やりとは別の問題を解決しなければなりません。停滞水では別のブログでも取り上げています。
 水やりの方法はこれでいいのかと迷ったときには、植えた業者さんや近くの業者さんに相談しておくと安心ですね。

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